平安時代には薫物（たきもの）という香りの文化がありました。『源氏物語』にも数多くの場面で薫物が登場します。
薫物はインドに端を発し、仏教と共に中国に渡り『千金方』という医書に記載されているように医薬として進化し、日本に渡って嗜みの香り、フレグランスとし て開花します。このように薫物は、シルクロードの終着点である日本の文化の特性と優位性を示す証しであり誇りであると言えるのです。　平安時代には六種 （むくさ）の薫物という6種類の空薫物（そらだきもの）、現代風に言えば室内芳香用のブレンド香がありました。この六種の薫物は、4から8種類の粉末香を 蜜で練り合わせて作る香で、「梅花」「荷葉」「侍従」「菊花」「落葉」「黒方」の名が付けられています。このアルバムはその六種の薫物の名を曲名とし、景 光が平成18年6月から9カ月かけて作曲した現代雅楽作品集であり、吹物（龍笛、大篳篥）と糸物（楽琵琶、楽箏）の編曲が加えられています。フリーリズム の序以外は全曲異なるリズムで作曲されています。最後の「蘇合香」だけが平安朝雅楽の復曲となっています。
(紹介原文のまま)